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..*..*.. 2006 Aug 17, Thu ..*..*..

'*★ 小手鞠るい 「エンキョリレンアイ」 ★*'


発売から5ヶ月で売り上げ10万部を突破した 小手鞠るいさんの エンキョリレンアイ を読みました。

97年に知り合いの作家の川滝かおりさんのことを書いたことがあります。その後、彼女の作品である「国際恋愛図鑑」の感想を書いたことがあります。

この「川滝かおり」さんが「小手鞠るい」さんです。 2005年、第十二回島清(しませ)恋愛文学賞を受賞されています。受賞作は、 欲しいのは、あなただけ (新潮社)。

私は、恋愛小説は滅多に読みません。もともとそんなに好きじゃないっていうこともあるんだけど、結末が悲しいことが多いのと、自分に合わなかったときの「時間を返せ」的な脱力感が嫌だから。

でも、思い立って読み始めたこの小説。一気に読んでしまいました。静かに流れるんだけど、テンポがよく、入り込んでいく感じ。

主人公の花音(かのん)が本屋さんでの最後のアルバイトの日に、客として来た海晴と知り合いますが、留学中の海晴はアメリカに戻り、2人のやりとりはメールを通して始まります。

とても丁寧につくられた作品だと思います。

まず、背景の事実関係の正確だと思いました。

物語は1993年のことですが、私は94年にあの地区へ留学しています。当時、私も向こうでメールをやりたいと思い、日本からノートブックを持っていきました。

ウィンドウズ95の出る前で、設定が難しくて、なかなか日本語のメールを送る環境にはできませんでした。インターネットは走りで、検索もできない時代。知っていそうな人を探しては聞き、四苦八苦して、やっとなんとか始めたメール。海晴の、最初の設定に戸惑ったというメールに、「そうそうそうなんだよ」と苦笑しました。

また、筋とは直接関係ないんだけど、当時は、メールの行き違いのトラブルもたくさんあって、送られたメールが文字化けしてた、メールを受け取れなかった、ルームメートやクラスメートにパスワードを盗まれてひどい目にあった、なんていうのも日常茶飯事でした。

留学する前の年に「高校教師」を見て毎回、泣けるストーリーだった記憶があって、その辺もなつかしかったです。

ストーリーに出てくるCIA(The Culinary Institute of America)という料理学校は、私も行ったことがあります。書いてある通り、とても厳しいらしく、普通の大学のキャンパスと違って、休憩している人たちは、本当に疲れをとっている印象を受けたのを覚えています。

世界でも1位2位を争う料理学校ですが、"CIA"という名前のため、知らない人はFBIやCIAと混同してしまい、私は最初は警察官を育成するようなとこだと思ってました(笑)。カリフォルニアのナパにもありますね。

登場する町は、だいたい知っている場所で、なだらかなキャッツキル山脈と自然がとけ込んだ美しいところです。海晴のレポートの通り、花音の経験した通り、です。物語用に作られたものではありません。

2人の間が盛り上がって、危機がくるだろうということは読んでて想像できます。それでも何も起こらないこともあるし、どんでん返しが起こることもある。

「この感動した気持ちを裏切る展開にはならないで」と祈りながら読み進みました。どんな結末になっても、登場人物の誰かひとりは、私を裏切らないで欲しい、と。

文章のところどころで感じる「何かくる」感じ。やがて訪れるであろう終わりはどこでどんな形でくるのか。それとも、もしかしたらこの感覚は錯覚か。

この作品は「名作」と言えると思いました。

いつまでも心に残って、余韻を味わうことができます。「言葉」と「余韻」を感じられる本だと思います。同時に、あとでじっくり考えてもボロがでない、というか、「気持ち」の矛盾がない作品だと思いました。

女性だけでなく、男性も楽しめる作品だと思います。映画化されたら、とても美しい画像になると思うんだけど。ニューヨークのアップステート(マンハッタンではないとこ)は本当にきれいなところです。

小手鞠さん(とここでは呼びます)の他の作品も読んでみようと思いました。



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