'*★ 井出有治のF1スーパーライセンス剥奪 ★*'
第4戦のサンマリノ(2006.4)でアルバースにヒットした井出有治、あわや大事故の一件で、メディアや選手、そして外野も騒ぎだしました。やむなく、第5戦ヨーロッパGPでは井出をひっこめたスーパーアグリチーム。純正日本チームを掲げていたスーパーアグリチームにとって日本人を使えなくなったのは大きな痛手でした。
しかし、それだけでは終わりませんでした。ヨーローッパGP直後から暗い噂が出回りました。「井出は未熟だ、スーパーライセンスを剥奪する」と。そしてそれが現実になってしまいました。
スーパーライセンスはF1のドライバーになるために必要なものです。これが発行されるにはいくつかの条件があります。F1マシンでサードドライバーをつとめた経験がある、とか、他の選手権で何位以内に入賞した、とか。井出有治は、その条件をクリアしてスーパーライセンスを得ました。
井出有治のスーパーライセンス剥奪の詳しい経緯はスーパーアグリチームのホームページに掲載されています。つまりFIA(国際自動車連盟、F1の主催者)と3人のチーム首脳代表がスーパーアグリチームに一方的に通知したようです。これは表事情です。
井出は、スーパーライセンスを剥奪されるほどひどい走りをしていたのでしょうか。あれこれ議論は上がっていますが、スーパーライセンス剥奪は異常だ、というのが大方の見方でしょう。
なぜこんなことが起こってしまったのか、FIAや各チームには思惑があって、そこに井出の走りがつけこまれてしまった、というのが現状のようです。
今、一番多くささやかれている裏事情というのは...
スーパーアグリの旗揚げから参戦までは半年もありませんでした。なぜこんなに急いだのでしょう?それはFIAの規約が再来年(2008年)から大幅に変わるからです。
F1にはお金がかかりすぎてチームを維持することができなくなる傾向であったため、FIAは低予算で参戦できるように2008年からの規約を変更しました。つまり2008年からは安価でF1に参戦することができるのです。FIAはその枠を12チームとしました。そして、既存のチームはすべて2008年以降もエントリーすれば認める、と。
つまり2008年以降にはエントリーしたいチームが増えるわけです。F1に参戦すれば知名度は一気にアップしますし、安くあげられるのなら参戦したいチームはたくさんいます。
先月(2006年4月)、FIAは2008年度の新規参戦チームを募集しました。既存の11チームはすべて認められました。最後の枠は1チームをめぐって12チームが名乗りをあげました。
こうなることが予想されたため、スーパーアグリチームは、高い金額を払って今年(2006 年)から参戦して、2008年以降もスムーズに事が運ぶようにしたと言われています。これは正しい選択だったと言われています。
不満なのは今回、2008年度の参戦に選ばれなかったチーム。中でも、いくつかのチームは参戦意欲満々で「破れたけれどもどうにかして参戦する」などという不可解なコメントを残していたりします。どうやって参戦するか、残された道は、弱小チームや資金のないチームを買収する、ということが考えられます。
スーパーアグリチームの純正日本チームの体制を崩し、日本のスポンサーやサポートがつかないようにして資金難にする、スーパーアグリチームの評判を落としてF1で継続できないようにする、そして買収。
(ちなみに、今回の井出のスーパーライセンス剥奪に強行姿勢をとったと言われているのは、マクラーレンオーナーのロン・デニス。マクラーレンの系列のチーム(Bチーム)は先の2008年度参戦に落ちています....)
つまり、今は「隙を見せると叩かれる」という時期であると思われます。そして、それにひっかかってしまった井出有治。以前書いたように、マシンや環境など彼の力ではどうにもできなかった部分が多く、決して、言われるほどひどい走りをしていたわけではないというのが一般的な見方です。
上記のことは「噂」であって、一般人には真実のほどはわかりません。でもいろんなことを考え合わせてみると、おそらく、井出有治はそういった争いに巻き込まれた被害者でしょう。
F1の世界も他と変わらずこわいですね。最先端の自動車技術で争っているレースの裏では政治的取引ががぐるぐる渦巻いています。
井出有治は、自身の公式サイトで「F1デビューしてから苦戦の連続でしたが、ようやくマシンの状況も良くなり、これから!と思っていた矢先の出来事だったので、本当に残念です。...時間はかかるかもしれませんが、もう一度、夢の実現に向けて頑張ります!」と言っています。めげずに頑張ってほしいです。
正直、3戦走ったあとの井出有治の走りを4戦以降も続けてみてみたかったです。
スーパーアグリには、もっともっと強いチームになってもらって、FIAや他のチームを見返して欲しいです。応援します。
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