ブログトップへアメリカの生活へホームへ



   
..*..*.. 2005 Jun 06, Mon ..*..*..

'*★ BARホンダの2戦出場停止について ★*'


先週のヨーロッパGPから、佐藤琢磨のいるBARホンダの出場停止が解けました。BARホンダは、4月24日のサンマリノGPのあと、5月5日に国際控訴裁判所からサンマリノGPでの失格、続くスペインGP(5/8)とモナコGP(5/22)の2戦での出場停止処分となりました。この件は「政治的」な側面をを多く含んでいました。今回はこの経緯について書いてみたいと思います。


4/24 (日)

サンマリノGP後の車両点検で、3位のBARホンダのバトンのマシンの重量が、FIAのレギュレーションの規定の600kgに満たない594kgだった。レーススチュワード(審判)の6時間に及ぶ再検査とBARホンダへのヒヤリングの結果、レース中に600kgをきることはなかったと判断され、BARのレース結果が合法と確定された。


4/25 (月)

この結果を不服としたFIA(国際自動車連盟、F1の主催者)が、FIA管轄下の国際控訴裁判所に提訴。悪質な故意の違反として、BARホンダの2005年度の全選手権出場停止と罰金を求める。

+++BARホンダのマシンは、構造上、一定量のガソリンを常に残していて、このガソリンはレース中に抜けないようになっている。

+++BARホンダは、このガソリンを残したまま重量点検に出していた。ただし検査のとき、レーススチュワードが「重量をはかるのでガソリンを全部抜いてください」と言ったのに対して、BARホンダ側は「全部、抜きました」と言ったそう。これが「嘘をついた」というようにとられ、その後の検査とヒヤリングが長引く原因となった。

+++ただし、このことはレーススチュワードは最終的に「合法」と認めている。でも、FIA側は認めなかった。

+++FIA側の主張: この残っているガソリンはレース中に本当に抜けない(使えない)ものなのか、もし、レース中に抜くことができるのならば、レースの間はこのガソリンを抜いておいて、最後のピットストップのときに再びガソリンを入れれば、レース中には重量を軽くし、レース後の点検ではひっかからなくなる。もしそうなら、こういうやり方は悪質だ。徹底的に調査するべきだ。

+++FIA側の主張: レース中に最低重量を下回ったかどうかの判断は、データからはできない。もし、燃料が600kgを下回らないためのものだったのなら、この燃料はバラスト(重り)となる。そしてバラストは固定されてなければいけない。(つまり、ガソリンをバラストとして使用しちゃいけない、これは違反)。

+++BARホンダ側の主張: レース後タンクに残っていた燃料は、エンジンを正常に作動させるために最低限必要なもので、重量を満たすためのバラストとして使用したわけではない。レギュレーションの最低重量は「ガソリンを抜いた重さ」とは明記されていない。レギュレーションの解釈の違い。


5/5 (木)

国際控訴裁判所の裁定結果: 故意ではなく悪質とは認めないものの、レギュレーションが不明瞭な場合は、確認しなくてはいけない。BARホンダはこの確認行為を怠ったとして、サンマリノGPの失格、スペインGP(5/8)とモナコGP(5/22)の2戦での出場停止処分となった。また、1年の間に同じことが繰り返された場合には、さらに6か月の出場停止処分が追加されることになる。(=1年間の執行猶予付きで、6カ月間の出場停止)

+++一般的な疑問点: この燃料システムは、他のチームも採用しているはず。だのに厳しいチェックを受け、あれこれ言われたのは、BARホンダだけ。確認行為を怠ったという理由で2戦も出場停止。もともとの重量規定にひっかかったのはバトンのマシンなのに、琢磨も失格。

+++よくわからないままの結論: BARホンダは運が悪かった。


この背景には、「GPWC(グランプリ・ワールド・チャンピョンシップ)」側とFIAの対立があります。このGPWCは、現在F1に参戦しているフェラーリを除くエンジンメーカー(BMW、ダイムラークライスラー=メルセデス、ルノー)で結成され、2008年にF1のライバルシリーズ(F1に対抗するグランプリ)を立ち上げることを目標としています。

GPWCは、もともと、FIAのレギュレーションの不明瞭さに反発して設立されたそうです。現在のFIAのレギュレーションは常に解釈が必要で、各メーカーは以前から不満を持っていたわけです。なにかやろうとするたびにいちいち確認しなくちゃいけなければ、時間はかかるし、アイディアが外に漏れてしまう危険もあります。

GPWC立ち上げ当初はフェラーリも加入していたのですが、今年になってフェラーリが抜けたため、GPWCは自然消滅するだろうと見られていました。ところが、それまでFIAとGPWCの間でずっと中立姿勢をとっていたホンダとトヨタが、今年になってGPWCに賛同したのです。そのことに、FIAはとても腹を立てました。

BARホンダは、開幕戦のオーストラリアGPで、ポイント圏外の2台をゴール寸前でピットに入れて、次戦での新エンジン交換を狙いました。これは、今年変更になったレギュレーションの不明瞭だった部分の抜け穴をついたものです。これにもFIAは腹をたてていました。

BARホンダはその制裁を受けたと言われています。運が悪かったわけではなく、最初からBARホンダは狙われていたということです。


5/6 (金)

この判定結果を受け、BARホンダは、他の車メーカーと協議の場をもうける予定、と発表。


5/9 (月)

GPWCに賛同していたホンダとトヨタが正式に加盟し、共同でエンジンレギュレーションに対する提案を一本化すると同時に、F1全体の発展のために活動していくと発表。これは、レギュレーションの不明瞭さを指摘すると同時に、今回BARホンダに裁定を下した国際控訴裁判所がFIAの管轄下であることも批判している。

その発表を受けて、FIAが声明をだす。「FIAは今後もF1の規則を厳格に適応していく。エンジンメーカー各社は別にF1に招待された訳ではない。彼らは自分自身の理由によりこの世界(F1)に入ってきた。その時点でこのスポーツの規則を受け入れた筈で、それが受け入れられないのであればここにいる必要はない。BARホンダは、現在もまだ我々の観察下にいる。今後、F1のイメージを乱すようであれば、執行猶予が取り消されることもある」


5/13 (金)

BARホンダが一転して裁定の受け入れを発表。

ホンダ福井社長がBARホンダの裁定受け入れを指示。今回の件に終止符がうたれる。


FIAの言っていることが間違っているとは言えませんが、レギュレーションを不明瞭にしておけば、こうやって制裁を加えることも思いのまま、不明瞭な点を確認させるようにしておけばチームの秘密事項が黙っていても入ってくる、それを操るのも思いのまま、という印象を受けました。

今まで、GPWCのことはぜんぜん興味をもっていなかったのですが、今回のことで、その存在の大切さがわかってきました。今後もGPWCの動きに注目したいと思います。


この記事のURL : http://www.kkoisland.com/blog/docs/F1/050606.html

TrackBack ping me at: http://www.kkoisland.com/blog/docs/F1/050606.trackback

no trackback





       

December 2018
           
         

Recent Entry

Category

Archives

2004年の日記
2003年の日記
2002年の日記
2001年の日記
2000年の日記
1999年の日記
1998年の日記
1997年の日記


RSS Subscribe