1998年6月4日(木) コース: ルート80 通った州: ワイオミング州、ユタ州 走った距離: 622.9マイル(996.64キロ) 料金所: なし ガス代: 30.39ドル(円) 宿泊先: Wendover, Uta(ユタ州)−− Motel 6 宿泊料金: 32.61ドル(4239円) (1ドル=130円, 1マイル=1.6キロ)
旅行の前日に、ブレットがユタ州を指差して言いました。 「Keiko、ここからここを見て、ほら、町がひとつもないでしょう?人が住んでないんだ。砂漠だからね。ここだけは気をつけた方がいいよ。」 「なるほど。じゃあ、最後の宿泊先だけはソルトレイクシティに決めるね。それから一日でサンフランシスコに入れるよね。」 「それがいいよ。ソルトレイクシティより先は夜になったら行かないこと。」 ...だから今日は、一番楽な日になる予定でした。昨日のシャイアンからソルトレイクシティまでは約400マイルくらいです。ゆったり走って、ソルトレイクシティで宿泊。それだけの予定でした。 車に乗れないのは残念だけど、今日はゆっくりできる... 今までは、車に長く乗っていたかったのと、早く着きたかったので、食事はファーストフード、そのうち2回は車を運転しながら食べていました。 だから、今日は久しぶりにデニーズに入ってゆっくり朝食をとって、11時くらいに出発。 今日はあまりに寒かったので、お店を出るときウェイトレスさんに、「ここの夏はいつですか?」と聞くと、「今よ。でも今日は寒いわね。雪が降るかもしれないんですって。」 ...だけど、今日が、今までの中でいちばん過酷な一日になってしまいました。 車を走らせると急に雨が振り出し、道がずぶぬれになりました。私は時間もあるしゆっくり行くことにしました。でも、どんなにスピードを落としても、ハンドルをとられるのです。 「おかしいな、どうしたんだろう?」と、たちまち35マイル(55キロ)にスピードが落ちます。高速は最低速度が決まっていて、40マイル以下で走ってはいけません。 でも道をみて、はっと気がつきました。 「雪だ!!」 私はニューヨークで、雪のこわさを嫌というほど知っています。凍った雪道で、車が180度回転してしまったこともあります。 「どうしよう、、、(私の車はジープのチェロキーなので)四駆にすれば少しはまし。だけど、ここでは車を停めて切り替える場所がない」 見ると周りの車ものろのろと走っています。路肩には雪が積もっていました。 ハンドルをにぎりしめて、緊張しました。 1時間くらいすると雪はやみ、やっと周りの景色を楽しむことができるようになりました。 「あーー緊張した。少し休憩しよう」と、ガソリンスタンドでコーヒーを飲みました。でも、やっぱり車に乗りたくなって、コーヒーを持っていきました。 出発しようとしたら、車が跳ねて、コーヒーを服にこぼしてしまいました。もう一回車から降りて服を洗って、、、あーん、情けない。。。 今日の景色は岩がごろごろしてきて、そこに草がはえていてきれい。いろんな形の岩があるので、目があきません。「もしかしてこの辺は『未知との遭遇』の舞台かなぁ...宇宙人がでてきそうだ」そんな風に考えながら走っていました。 ソルトレイクシティ−−5時 「もう着いちゃった。どこに泊まろうかなぁ」ときょろきょろしながら走っていたら、いつのまにか、ルート80をはずれてしまいました。 「大丈夫。こういうときのために余裕を見てるんだから」...ところが、そのまま市内の渋滞にはまってしまい、いつまでたってもルート80に戻れません。結局、1時間半もかかってしまいました。 他の場所と違って、ソルトレイクシティの標識は下の方にあって、見落としやすいんです。それに他の道の案内と一緒に小さくなっていたり。ソルトレイクシティってきらいになりそう。 やっと戻ったときにはもう6時半。「なーんだ、いつもと同じじゃない。早く泊まるところを探そう」 できるだけ先がいいので、ぎりぎりまでいこうとしたら、閑散としたところまで来たので戻ったりしました。何度かルート80を往復して、結局、いいところが見つからず、いやだったけど一日目と同じ、super 8 Motel に泊まることにしました。 「どうしたんだろう?やけに車が多い...」 ソルトレイクシティには空港もあるようで、往復バスなんてのも出ていました。 「予約してないんですけど」 「今日は部屋はありませんよ」 「え?」 びっくりして隣のホテルにも聞いてみたけど答えは同じ。 どこを見ても、人と車でいっぱいです。 「戻ろうか、でも明日1日でサンフランシスコに入るにはここはぎりぎりのところ。ここまできてるのに戻りたくない。だけど、先は...」 1分くらい考えて決めました。 「行こう。ブレットだって地図を見ただけで知らないのかもしれない。ガソリンを満タンにしよう。ガスがなくなるまで何も見つからないなんてことはない」 もう7時半。でも私は出発しました。 「日はあんなに高いんだもの。絶対に見つかる」 ...ところが、西に向かっているため太陽がまぶしくてあまりスピードが出せません。遠くでは雷がピンク色に光っています。 そして、いくところいくところ、どの出口にも No Services と注意書きがついています。 両脇は、砂だけの砂漠になりました。でも、雨でしめっていて、底無し沼のように見えます。 「こわい!!ここでハンドルをきり間違えたら、砂の底にしずむかもしれない」 ときどき見える出口。でも、町なんてありません。出口の名前の下に、No Services のマークが見えるだけ。 「体力は大丈夫。車も大丈夫。ガソリンスタンドは絶対にある」...そう信じてとにかく進みました。 1時間半くらい車を走らせて、やっとさっきから標識に表示されている一番大きいと思われる町の標識が見えてきました。Wendover ...ところが、ここの出口にも何もありません。 No Services... 涙が出てきました。こんなに大きな標識の町でさえ何もないのなら、あとは400マイル走らせて Reno という町に行くしかない。途中でガソリンを入れなくちゃならない。私はニューパルツでさえ、夜、ガソリンを入れたことがないのです。危ないし、こわいから。 泣きながら1分くらい走ると、West Wendover という町のサインが見え、ホテルの案内が出ているではないですか。一気に涙が止まりました(^^; 「やったーー!!」 ホテルは昨日と同じ、Motel 6 にしました。ここはカジノの町のようです。こわそうな男の人がたくさん道を歩いています。 受付けの男の人もヒスパニック系の頑丈そうな人。 私はともだちのユパから「ひとりで旅行してることを言っちゃだめ。どこから来て、どこに行くのかも言っちゃだめ」と言われていたのに、思わず、 「ソルトレイクシティから来たの。部屋があいてなかったの。ひとりでずっと運転してたの。こわかったーー!!」と言ってしまいました。 すると男の人は、にっこり笑って、「ここに泊まれるよ、よかったね」と言ってくれました。 明日、カリフォルニアに着きます。 ((注意)) この日は、NBAというバスケットボールの決勝戦の日で、ソルトレイクシティは人であふれていたそうです。 |