日本の中のアジア


2月 1日(月) 晴れ


この休みの間に、またまた「加治隆介の議」の続きを読みました。8巻から15巻。前回読んだときのふざけた感想はここ

で、今回はまじめな感想です。

前に読んだのは、7,8年くらい前の日本の出来事だったので、ただの読み物としてしかとれなかったのですが、今回の8巻からの内容は、ほぼ5年前から、つまり私が日本を出たあとの日本の状況が書かれていました。

当たり前と言えば当たり前ですが、日本を出てしまうと日本の政治の情報は極端に少なくなって、日本の派閥構成や、日本のスタンス、日本側の意見がよくわからなくなってしまいます。

また、アジアで起こっていることなどもよくわかりません。

ちなみに日本にいても日本の政治はわかりにくいという性格はありますが、多少の興味のある人なら、日曜日の討論番組やニュース解説などで、だいたいの概要はわかるものだと思います。マスコミに躍らされているというきらいはありますが、日本をでてしまうとそういうものがなくなってしまうので、"多少の興味"しかないとわからなくなってしまうのです。

が、このマンガを読むと、きちんと事実関係をもとに書かれているので、アメリカに来てからなんとなくは知っていても、よくわかっていなかった内容がはっきりわかってきました。

韓国の情勢や北朝鮮との国際緊張、竹島問題、日本と韓国や中国、台湾に対する日本との関係、そして日本のアメリカへの態度などが見えてきます。

また、日本の派閥そのものは事実を書いてはいないと思うけど、派閥関係などはこんな思想からくるんだ、ということがだいたいわかってくると思います。

...で、私はこの本を留学生必見!と言いたい。

アメリカに留学するといろんな国の留学生と出会います。日本から出てすぐのころは、ある程度日本の情報を 持っているけど、英語がうまくしゃべれなくて周りの人にはうまく伝わりません。

そして、だんだん英語に慣れてきたころには、日本側の意見がすでによくわからなくなってきます。

それに対して、アジアからの留学生は常に、実によく、自分の国のことを知っているという印象が私にはあります。

もちろん、どこの国にも(日本を含めて)おばかな留学生はたくさんいますので、そういう人たちは論外です。

私は以前はよく、そういうアジアからの私と同世代の留学生と話す機会がありました。もともと日本人には同世代の人が周りにあまりいなかったので、日本人は私一人ということがよくありました。

そうやって話していると、とくにお酒がまわってくると、個人的には友達でも、日本がいかにアジアの他の国からから嫌われているかがわかります。

私は、一通りの知識で反論というか日本を弁護しますが、だいたいにおいて黙ってしまいます。

それは、へたに強気にでると、相手を傷つけるからです。日本人に直接傷つけられた親族を持っている人が、ごまんといるからです。

日本にも戦争によって傷ついた人はたくさんいるでしょう。私の両親も戦争体験者です。でも、私はアメリカ兵によって直接傷つけられた人を、直接には知りません。

自分の国の文化を目の前で壊されたり、自分の言葉を「今日からしゃべるな」などと言われた日本人を直接には知りません。

そしてそういう議論になると、私は謝ることがよくあります。同じ若い日本人留学生から「謝るべきじゃない。日本にだって傷ついた人がたくさんいるんだ」と言われたことがあります。

けれども、直接傷つけられた憎しみに対して、日本の歴史を知っているだけの知識で何が言えるでしょうか。私(日本人)が謝ることによって、少しでも相手の気持ちが和らぐのなら私はそれでいいと思っています。

しばらくして「あの時代はしょうがなかったんだよ」と話が切り替わり、そして今度は現代の、これからの世の中の話になっていきます。

私は、そうなっても何も言えません。それは、知らないからです。日本の情勢も、思想も、スタンスも、考え方も、何も知らないからです。

昨日「加治隆介の議」を読んで、主人公の理想や考え方をあのとき知っていたら...そうしたら、主人公の考え方を自分に置き換えて話せばよかったんだ、そういう風に思いました。

...だけど、あのとき集まった韓国人も、中国人も、もうここにはいません。もちろんけんかをしたわけでも、嫌いになったわけでもありません。住所を聞いている人だっています。

だけど、一同に会することはもう二度とないでしょう。








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