彼と彼女-思い出したこと-(4)


2000年3月25日(土) 晴れ




私は「Uは風邪でもひいたのかな?」と思っていました。ところが1週間たっても来ません。みんな理由を知らなくて、先生に聞いてみると、「家の事情で帰国した。もうアメリカには戻ってこない。理由はわからない」と言うではありませんか。

私はびっくりして、Yを探しました。

私:「Y、聞いた?Uが韓国に帰っちゃったんだって!」

Y:「うん知ってる。しょうがなかったんだ」

私:「私はあの前日、彼女と話してるのよ。でも何も言ってなかった」

Y:「うん、彼女は言えなかったんだ」

私:「...」

Y:「彼女は3人姉妹なんだ。お姉さんはこっちの大学の4年生で、来年卒業する予定だ。Uには妹さんがいて、病気なんだ。ガンだって。もう助からないんだ。あと、よくて1年くらいだって。妹さんは、お姉さんがアメリカから帰ってきたら入れ替わりで留学することが決まっていて、楽しみにしてた。でも、お姉さんの帰国は間に合わない。妹さんは、とてもアメリカを見たがっている。だから、両親は妹さんをすぐにでも、留学させてあげようとしたんだ。」

Y:「ところが、Uの家は金持ちで、いとことか、まわりに留学している人がたくさんいる。だから、政府は、この一家からこれ以上、留学生を出したら、Uたち一家は将来、韓国を捨ててアメリカへ永住してしまうかもしれないと考えている。そしてそれはいけないと思ってる。」

Y:「だから、Uたち一家は、Uのお姉さんが帰ってくるまで、家から誰もアメリカに留学させちゃいけないと言われてたんだ。Uのお姉さんは来年卒業する。今、帰ったら学位がとれない。だから、語学学校に行ってるだけのUを帰国させることにしたんだ。急に決まったんだよ」

私:「そうだったんだ。妹さん、たいへんだね。Uも。だって来期から、学部に入れるはずだったのに。かわいそうに。でもきっと、Uはいつか戻ってくるんだよね?」

Y:「...Uは戻ってこないよ。親が怒ってるんだ。俺のことで」

私:「どうして?戻ってこられないってことはないよね?」

Y:「Uの家は由緒正しいんだ。娘の相手は親が決めた人じゃないと許さない。とくに俺みたいのは論外なんだ」

私:「どういうこと?それとこれとは別でしょ?彼女はこっちで勉強したいんでしょう?留学は彼女の意思次第じゃない?」

Y:「違うよ、親次第だよ。親がお金を出すんだから。彼女のお姉さんも、留学が終わって帰ってきたら結婚する相手が決まってるんだ。ご両親はUのことも心配してる。もう24歳だからね。相手を決めようとした。それが嫌だから、Uは俺の名前を出したんだ。親は『そういうつもりなら帰って来い』って言った。でもUは帰らなかった。でも、妹さんの病気がわかって、帰らないわけにはいかなかったんだ」

私:「...Yが行って、Uのご両親を説得してくれば?」

Y:「無理だよ。俺の話なんて聞きもしないよ」

私:「でも、やってみなければわからないんじゃない?」

Y:「Keikoはわかってないよ。俺はこっちでやっていきたいんだ。それに、俺だって一度戻ったら、もうここには戻ってこられないかもしれない。俺には十分な資金がないんだ。語学学校に行くことだけしか許されてない。でも、俺はこっちでやっていこうと考えてるんだ」

私:「じゃあ、Uとは離れ離れになっちゃうの?」

Y;「俺、彼女を説得したんだ。帰って親の決めた人と結婚するように、って。それで幸せになれないとは限らない」

私:「そんなことない、他に好きな人がいる場合は、幸せになれない...」

Y:「...俺、彼女の連絡先を知らないんだ。メモは捨てた。もう覚えてない。連絡はとれないよ...」

私:「Uを好きなんでしょう?それ以外のことは、あとで考えてもいいじゃない。でも、Uのことは、今じゃなくちゃ取り返しがつかなくなっちゃうかもしれないのよ。Uが好きなんでしょう?」

Y:「好きだよ。彼女ほど俺のことを理解してくれた人はいないかもしれない。確かに、彼女がここにいれば、彼女と俺はうまく行ったかもしれない。だけど、妹さんはどうなるんだ?俺だって悩んだよ。俺だって、ぎりぎりの生活をしてるんだ。明日、どうなるかもわからないんだよ!俺は日本人じゃないんだ!」

Uのこれまでの言動の意味が、すべてわかりました。YとUは、いつも同じようなしゃべり方をします。私にはもう、何も言えませんでした。

Y:「...俺たち、忘れるのが一番いいんだ...」

私も、「うん...」と言いました...
(おわり)







* 更新が遅れちゃって、ごめんなさい。日本に一時帰国してました。メールもたまってます。来週、まとめてお返事するので、ちょっと待っててね。



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